可処分所得の計算例
可処分所得の計算例
個人再生手続きでの、給与所得者等再生手続における第3の基準、可処分所得についての計算です。
可処分所得は、ご自身の収入から、家族構成、お住まいの地域等から算出される一定の生活費を引いた金額です。
細かくみていきましょう。
可処分所得基準とは
収入、所得税等、居住地、家族構成から計算される2年分の可処分所得の支払いが必要になります。
具体的には、下記の方法で計算した平均年収から必要生活費を引いたものの2年分です。
可処分所得の計算「平均年収額」と税金控除
2年分の収入から、2年分の所得税、住民税、社会保険料を引いたものを2で割ります。
収入は源泉徴収票の「支払金額」に、所得税は源泉徴収票の「源泉徴収税額」に、住民税は(非)課税証明書に、社会保険料は源泉徴収票の「社会保険料等の金額」に記載があります。
必要生活費
必要生活費は、政令が定める債務者とその扶養家族の個人別生活費、世帯別生活費、冬季特別生活費、居住費、勤労必要経費を合計して求めます。この場合の被扶養者は,所得税法上の扶養控除対象者と概ね一致するといわれています。
政令は、居住地を6つに区分けし、区ごとに個人別生活費などを定めています。ただし、居住費についてはより細かく区分けされています。神奈川県内の市町村は、下記の4区に振り分けられています。
第一区 | 横浜市、川崎市、鎌倉市、藤沢市、逗子市、大和市,三浦郡葉山町 |
第二区 | 横須賀市、平塚市、小田原市、茅ヶ崎市、相模原市、三浦市、秦野市、厚木市,座間市 |
第三区 | 伊勢原市、海老名市、南足柄市、綾瀬市、高座郡寒川町、中郡大磯町、同郡二宮町、足柄上郡大井町、同郡松田町、同郡開成町、足柄下郡箱根町、同郡真鶴町、同郡湯河原町,津久井郡城山町 |
第五区 | 足柄上郡中井町、同郡山北町、愛甲郡愛川町、同郡清川村、津久井郡津久井町、同郡相模湖町,同郡藤野町 |
個人別生活費
個人別生活費は、年齢によって変わってきますので、一部を紹介します。
個人別生活費 | 第一区 | 第二区 | 第三区 | 第五区 |
---|---|---|---|---|
7歳(小1) | 429,000 | 411,000 | 392,000 | 356,000 |
13歳(中1) | 598,000 | 574,000 | 549,000 | 500,000 |
16歳(高1) | 588,000 | 562,000 | 535,000 | 482,000 |
40歳 | 488,000 | 466,000 | 445,000 | 400,000 |
70歳以上 | 624,000 | 608,000 | 572,000 | 520,000 |
世帯別生活費
また、世帯別生活費は、世帯の人数によって決まります。
世帯別生活費 | 一人 | 二人 | 三人 | 四人以上 |
---|---|---|---|---|
第一区 | 527,000 | 583,000 | 647,000 | 703,000 |
第二区 | 503,000 | 557,000 | 618,000 | 672,000 |
第三区 | 480,000 | 531,000 | 588,000 | 640,000 |
第五区 | 432,000 | 478,000 | 530,000 | 577,000 |
冬期特別生活費
冬期特別生活費は、区と世帯人数によって1万3000円~2万7000円程度です。
居住費
居住費 | 一人 | 二人から六人 |
---|---|---|
横浜市,川崎市 | 642,000 | 835,000 |
第一区(上記以外) ~第三区 |
550,000 | 714,000 |
第五区 | 517,000 | 672,000 |
勤労必要経費
勤労必要経費は、収入やお住いの地域によって変わってきます。
第一区 第二区 |
200万円未満 | 490,000 |
---|---|---|
200万円以上,250万円未満 | 525,000 | |
250万円以上 | 555,000 | |
第三区 | 200万円未満 | 476,000 |
200万円以上 | 505,000 | |
第五区 | 455,000 |
可処分所得の計算例
実際の可処分所得の計算例を見てみましょう。
可処分所得の計算例1
【例1】(横浜市在住、40歳、一人暮らし、家賃月額7万円)
≪収入・税額等≫
2年前年収:4,500,000円
2年前源泉徴収額:125,000円
2年前社会保険料等の金額:580,000円
2年前年税額:232,700円
1年前年収:4,700,000円
1年前源泉徴収額:129,000円
1年前社会保険料等の金額:620,000円
1年前年税額:230,000円
≪計算≫
平均年収額:4,500,000円+4,700,000円-(125,000円+580,000円+232,700円+129,000円+620,000円+230,000円)÷2=4,181,650円
必要生活費:488,000円+527,000円+16,000円+642,000円+555,000円=2,228,000円
控除されるものを表にすると、こうなります。
個人別生活費 | 488,000円 |
世帯別生活費 | 527,000円 |
冬季特別生活費 | 16,000円 |
居住費 | 642,000円 |
勤労必要経費 | 555,000円 |
合計 | 2,228,000円 |
---|
可処分所得基準:(4,181,650円-2,228,000円)×2年=3,908,300円
第3の基準である可処分所得は約390万円となりました。
すなわち、横浜市で一人暮らしの方で、年収460万円程度の人の場合、個人再生をする際に、給与所得者等再生を選ぶと、390万円以上の支払いが必要になります。
借金が1500万円なら債権額の基準は300万円、財産から算出される清算価値が390万円以上ないなら、給与所得者等再生を使うことで、小規模個人再生より支払い額が多くなるという計算です。
借金が500万円程度の場合には、減額の幅が少ないことになり、あまり現実的ではなくなります。
可処分所得の計算例2
次に、同じくらいの年収で、お住まいの地域が厚木市、配偶者がいる場合の計算例です。
【計算例2】(厚木市在住,40歳夫婦,賃料月額6万円)
≪収入・税額等≫
2年前年支払金額:4,500,000円
2年前源泉徴収額:125,000円
2年前社会保険料等の金額:580,000円
2年前年税額:232,700円
1年前支払金額:4,700,000円
1年前源泉徴収額:129,000円
1年前社会保険料等の金額:620,000円
1年前年税額:230,000円
≪計算≫
平均年収額:4,500,000円+4,700,000円-(125,000円+580,000円+232,700円+129,000円+620,000円+230,000円)÷2=4,181,650円
必要生活費: 466,000円+466,000円+557,000円+19,000円+714,000円+555,000円=2,777,000円
可処分所得基準:(4,181,650円-2,777,000円)×2年=2,809,300円
可処分所得は先程よりも下がり、約280万円です。
借金が1200万円程度あったり、280万円程度の財産がある場合には、給与所得者等再生を選択することも増えてくるでしょう。
可処分所得の計算例3
さらに、子供がいる場合の計算例です。
【計算例3】(海老名市在住,40歳夫婦,高1と中1の子供,賃料月額9万円)
≪収入・税額等≫
2年前年支払金額:4,500,000円
2年前源泉徴収額:125,000円
2年前社会保険料等の金額:580,000円
2年前年税額:232,700円
1年前支払金額:4,700,000円
1年前源泉徴収額:129,000円
1年前社会保険料等の金額:620,000円
1年前年税額:230,000円
≪計算≫
平均年収額:4,500,000円+4,700,000円-(125,000円+580,000円+232,700円)+(129,000円+620,000円+230,000円)÷2=4,181,650円
必要生活費:445,000円+445,000円+535,000円+519,000円+640,000円+25,000円714,000円+505,000円=3,828,000円
可処分所得基準:(4,181,650円-3,828,000円)×2年=707,300円
可処分所得は、最低支払い額の100万円を下回りました。
このケースでは、給与所得者等再生を使っても、支払い額は増えないことになります。
このように、いくつかの例を出しましたが、
- 収入がいくらか
- お住まいの地域、家賃
- 家族構成
によって、可処分所得は大きく変わることになります。
ご相談時には、小規模個人再生か給与所得者等再生かを決める必要はありません。ご依頼後に選択することも可能です。
また、もし、ご相談時に可処分所得の金額を算出したい場合には、2年分の源泉徴収票や市県民税の金額がわかる資料等をお持ちいただければ、給与所得者等再生が選択肢になりうるのかお伝えできます。
可処分所得の計算例も豊富に持っていますので、給与所得者等再生のご相談はジン法律事務所弁護士法人までご予約ください。