個人再生の手続とは
個人再生の手続とは
支払を続けると破綻してしまいそうな人のための制度で、債権者全員に対して、借金の一部だけを3~5年分割で支払って残額をカットしてもらえる制度のことです。裁判所を通した手続です。
元金をカットできる点で任意整理よりも支払額が少なくて済むことがほとんどです。
具体的に、どの程度カットしてもらえるかは、ケースや手続によって違います。
全国で、年間2万人以上の方が利用している手続です(平成21年度司法統計より)。個人再生法という法律はなく、民事再生法のうち個人を前提とした部分が適用されます。そのため個人版民事再生と呼ばれることもあります。
どの程度の減額できるか
2つの基準を満たした金額を払う必要があります。
法的には、基準を満たしたギリギリの金額が減額できる限度です。
最低弁済額基準
借金の金額によります。
具体的には、以下の表に記載された金額以上の支払が必要になります。
借金の総額 | 最低弁済基準額 |
---|---|
100万円未満 | 総額 |
100万円以上 500万円未満 |
100万円 |
500万円以上 1500万円未満 |
総額の5分の1 |
1500万円以上 3000万円以下 |
300万円 |
3000万円から 5000万円以下 |
総額の10分の1 |
たとえば、借金が400万円の人は100万円以上払う必要があります。
借金が1000万円の人は200万円以上。
借金が4000万円の人は400万円以上ですね。
借金が100万円未満の人は全額払うことになるので、通常はあまりメリットがないです。
個人再生で借金を5分の1に減額、という話が出回っていますが、これは、500万円~1500万円の借金がある場合の話です。
清算価値条件
また、この表の金額の要件のほかに、財産以上の支払が必要です。
破産をした場合には、債権者は財産分の配当を受けることになりますので、個人再生の場合、それ以上の支払が必要となります。
預貯金、有価証券、現金、保険金、退職金、不動産等の財産の額を算定し、それ以上の支払が必要です。
生命保険の解約返戻金については全額、退職金については裁判所によって8分の1から4分の1程度の金額が加算されます。
不動産は査定価格からローンがあればそれを差し引きます。
2つの条件について
表で算出した金額と財産額のいずれか多い方の額以上の支払をする必要があります。
両方の額を加算するということではありません。
借金が500万円の方は最低弁済基準からは100万円となります。
財産が150万円ある場合は、100万円を上回りますので、財産基準の額である150万円が最低支払額となります。
財産が80万円の場合には、最低弁済基準の100万円の方が多いので、こちらが最低支払額となります。
これらは、小規模個人再生手続という債権者の過半数が反対すると通らない手続きの場合です。
債権者の反対があっても借金がカットされる給与所得者等個人再生手続の場合には、もう一つ可処分所得以上の支払が必要という要件があります。
カットされた借金の支払
原則として3年間で分割払いをしていくことになります。
支払については、再生手続終了後、各業者へ銀行振込で支払います。
カットされた後の借金が100万円となった場合、毎月2万8000円弱の支払となる見込みです。
支払期間は特別な事情があれば5年まで延長可能です。
個人再生手続を使える人
簡単にいえば、要件は2つあります。
これを満たさないと使えません。
まず、1つ目の要件として、申立人自身に
将来において継続的にまたは反復して収入が見込めること
が必要です。
普通のサラリーマンはもちろん、自営業者、パート、年金受給者でもこの要件はみたすことになり、個人再生は使えます。
厳密にいえば、このうちサラリーマンのように安定した給料をもらっている人については、通常の個人再生(小規模個人再生)以外に、給与所得者等個人再生手続という手続も使えます。選択肢が増える、ということです。
ただ、ほとんどのケースでは、小規模個人再生という通常の個人再生で問題ありませんので、自営業者でも問題なく個人再生が使えます。
無職で収入がない場合には、今後、借金を一部でも支払っていくのは厳しいと思われるので、個人再生は使えません。
個人再生の2つ目の要件として借金の上限というのがあります。
借金の総額が5000万円を超えないこと
が必要です。
ただし、住宅ローンはのぞきます。(住宅ローン条項を使う場合)
たとえば、
ということになります。
弁護士費用について
事件処理に必要な費用としては、手数料30万円+消費税です。
これ以上に別途着手金・報酬はいただいていません。
また、実費が3~4万円必要になります。
正確な費用は裁判所や債権者数によって変わってきます。
(なお、事案や管轄裁判所によっては、再生委員を選任しなければならなくなるため、18万程度必要なこともあります。神奈川県の裁判所の場合、弁護士が代理人となった場合には原則として不要です。)
住宅ローンあり
上記の弁護士手数料に10万円+消費税が加算されます。
銀行と交渉したり、再生計画案の作成も追加部分がある等の作業が必要なため、増額されています。
なお、再生計画に基づく分割払いの代行も依頼される場合には、振込手数料分を依頼者の負担とし、これを含めて振込1件につき手数料1000円が必要となります。
ジン法律事務所弁護士法人では、弁護士費用は手数料のみで、別途着手金・報酬のように2度の大きい費用がかかることはありません。
弁護士費用は実費を含めて6回まで分割払いが可能です。
弁護士が受任した後は、借金の返済は再生手続終了まで止まります。