FAQ(よくある質問)
FAQ(よくある質問)
Q.個人再生の清算価値とは?
個人再生の最低支払い額を決める一つの要素が清算価値です。
清算価値についてよくある問題を解説します。
この記事は、
- 個人再生での財産の取り扱いが気になる
- 一定の財産はあるけど、いくら払うことになるの?
という人に役立つ内容です。
個人再生の清算価値とは
清算価値とは、個人再生の再生計画における弁済率が、破産における場合の配当率以上でなければならないという基準です。
清算価値の根拠条文としては、民事再生法174条2項4号があります。
再生計画の決議が、再生債権者の一般の利益に反するときは不認可としています。
この一般の利益が、清算価値基準を定めたものとされています。
再生計画の弁済率が、破産手続における配当率を下回る場合には、再生債権者は一般の利益に反するものとされ再生計画が認可されません。
そのため、再生計画案では、清算価値以上の支払いが必要になるのです。
再生計画案では、このような、清算価値基準、最低弁済額の金額のいずれもが満たされる必要があります。
そのため、これらの基準の高い方が最低支払い金額になってくるのです。
財産が多い人の個人再生
財産が多い人は、清算価値が高くなり、支払い額も高くなります。あまり減額されないことになるのです。
極端な事例では、債務者の財産の総額が、債権額以上になるような場合には、再生債権の全額を弁済する計画を作る必要があります。
100%弁済の再生計画です。自己破産が認められたとしても、財産からすべて配当されるような事案です。
この場合、利息や遅延損害金などを含めても、清算価値の方が高い場合は、再生手続開始決定後の利息や遅延損害金も免除できないので注意する必要があります。
清算価値の基準時はいつの時点?
財産価値は変動します。預貯金だけでも増減することは明らかでしょう。
そこで、清算価値の基準時はどの時点にするのかについては争いがあります。
個人再生では、清算価値の保障原則は、再生計画認可の要件になっています。
そのため、理論的には、清算価値算定の基準値は、再生計画の認可時点となります。
東京地裁等でもこのような運用がされています。
たとえば、再生計画の認可時までに、退職して退職金を全額受け取っているような場合だと退職金の全額が清算価値に算入されることになります。退職金は、本来、見込額の8分の1という評価をします。退職が現実化しても4分の1と評価されます。
しかし、現金で受領してしまった場合には、このような割引がききません。全額を預金や現金で持っていると評価されてしまうのです。
株式や、暗号資産等で変動が激しい財産についても、再生計画の認可時点が基準になってきます。
清算価値に関する提出資料
清算価値の提出については、個人再生の申し立て時に財産目録を提出します。神奈川県では陳述書や報告書に添付する書式です。
その財産目録から計算しやすいように、清算価値チェックシート等を提出することがほとんどです。
清算価値チェックシートの書式は裁判所によって違います。
神奈川県では、横浜地方裁判所の書式に従って提出します。
こちらも、その時期の運用によって変わってくるので、最新のものをチェックするようにしてください。
清算価値については、神奈川県内では2021年4月に運用が変更になってますので確認をする必要があります。
Q.2021年4月の神奈川県の個人再生の清算価値変更点とは?
清算価値の算定と自由財産の扱い
この清算価値の算定の際に、20万円までの預貯金や、保険解約返戻金をどうするのかという問題がありました。
これらの財産については、自己破産でも、自由財産拡張があったものとみなして、処分をしない運用がとられていたからです。
自己破産との均衡が、清算価値の趣旨であるとすると、個人再生でも、これらの財産は清算価値に含めなくて良いのではないかという話がありました。
神奈川県内での運用変更は、このような20万円を下回るような預貯金や保険、自動車、退職金見込み額をゼロと評価して良くなったというものです。
以前から、東京地方裁判所等ではこのような雇用されていました。
そこに合わせる形での運用変更となります。
この変更に伴い、清算価値チェックシートの書式等が変更されています。
保険等については、複数あった場合、すべての保険解約返戻金を合算した上で、解約返戻金額が20万円をを超えるかどうかを判断します。
20万円を超える場合には、すべての保険の解約返戻金額が清算価値に加算されます。
なお、確定拠出年金は差押え禁止ですので、ゼロと評価されます。
不動産の清算価値評価方法
不動産の清算価値については、査定書を提出します。
査定書で、基準の評価額を決めた上で、住宅ローン等、抵当権の担保に入っている債務額を差し引いた金額になります。
マイナスの場合には、オーバーローンとなります。
この場合はゼロと評価します。
不動産について、明らかにオーバーローン物件のような場合には、ネット上の一括見積りなどで届いたメールなどでも資料として十分です。
ただし、アンダーローンなど不動産をしっかり評価する必要がある場合、査定価格について、疑いがあるような場合には取り直しを求められたりするケースもあります。
あまりにも相場から離れて安く評価されているようなケースでは、個人再生委員によって、不動産の査定書を取得し、金額が大きく上がったようなケースも報告されています。
また、一応、複数の査定を提出してきているものの、実質的には1社が査定していて同一内容のようなものだったり、単にレイアウトを変えただけのものもあったりします。
そのような場合には、さらに追加で査定提出を求められることが多いでしょう。
土地利用権の評価と清算価値
土地が他人名義で、建物を所有している場合に、その財産評価が問題になります。
建物価格だけではなく、土地の利用権も算定する必要があるからです。
借地権や法定地上権や、使用借権等の土地利用権がある場合には、これを評価していくことになります。
借地権の場合は、一般的には、更地価格の7割程度、使用借権の場合には、更地価格の1割程度と見る例が多いです。
土地の利用権を、使用借権だとして、1割で評価して清算価値を計上したものの、実際には、法定地上権が成立するとされ、相当価格が上乗せされてしまうケースもあります。
この点は、裁判所の運用によって変わったり、競売の場合との比較となるので注意が必要でしょう。
●関連Q.不動産の一部が他人名義の場合、どう評価されますか?
貸付金やで売掛金の清算価値
貸付金や売掛金債権も、権利です。債権として存在するので、その額面が清算価値に加わります。
しかし、回収見込みが少ないようなケースや、回収困難な場合などは、その評価が問題となります。
例えば、額面上は債権が残っているものの、相手が自己破産をするなどして、配当の見込みはないようなケースや、相手が行方不明のケースで消滅時効期間が経過してるようなケースだとすると、回収見込みはほぼないといえます。
このような事情があるのであれば、ゼロと評価し清算価値には算入しない取り扱いもあります。
回収見込みがないということを示す資料を提出し、個人再生の申し立てをすることになります。
個人再生については、事例豊富なジン法律事務所弁護士法人の弁護士に、ぜひご相談ください。