FAQ(よくある質問)
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Q.再生手続開始決定の効果は?
個人再生手続きでは、裁判所に申し立てをした後、問題がなければ、再生手続開始決定が出されます。
これにより、法律関係が色々と変わります。
今回は、再生手続開始決定の効果について解説します。
この記事は
- 個人再生を検討している
- 個人再生の準備中に裁判を起こされた
という人に役立つ内容です。
再生手続き開始決定とは
裁判所は、小規模個人再生の申立てがあった場合、除外事由がない限り、小規模個人再生手続きの開始を決定します。個人再生の手続きを始めるという決定です。
除外事由は、法律で決められた棄却事由や個人再生の要件を明らかに満たさないような場合です。
個人再生のうち、給与所得者等再生の申立てがあった場合も、同じように除外事由がなければ、給与所得者等再生手続きの開始を決定します。給与所得者の要件を満たさない場合には、申立人の希望によって、小規模個人再生での開始決定が出されることがあります。
この開始決定は、小規模個人再生でも、給与所得者等再生でも、個人再生を始めるという裁判所の判断です。
再生手続開始決定の効力
個人再生の開始決定は、その決定の年月日時が記録されます。
決定時に、その効力が発生します。
誰かに送られて届いてから効力が発生、というものではなく、決定で効力が発生します。
裁判所は、個人再生の開始決定をした際、再生債権の届出期間と、届出債権に対する異議申述期間を定める必要があります。また、通常は、再生計画の提出期限も決められます。
これらの情報が、再生手続開始決定という紙には表示され、申立人や債権者に送られます。
再生債権の届出期間等
開始決定を見れば、その後の手続きの期間が、具体的に書かれています。再生計画の提出期限も明記されています。そこで、それ以降のスケジュールを掴むことができます。いつ頃に、認可され、いつ頃から支払が始まるのか見通しをたてられることでしょう。
再生債権の届出期間は、特別な状況を除き、再生手続き開始決定日から2週間以上1ヶ月以下で定められることになります。
ただし、日本国内に住所、居所、営業所または事務所がない再生債権者が知られている場合は、4週間以上4ヶ月以内で定めるとされています。
届出期間後の、一般異議申述期間は、特別な状況を除き、その期間の初日と債権届出期間の末日との間に2週間以下の期間をおき、1週間以上3週間以下の範囲で定められます。
異議申述期間から一定期間が過ぎた後に、再生計画の提出期限が設定されているはずです。
異議を出して債権額を争う場合の手続のため、一定の期間が置かれているものです。
試験積立の開始
再生手続き開始決定が出ると、一部の裁判所では試験積立・積立勧告・履行勧告がされることがあります。
神奈川県内の裁判所では、この運用がされています。
試験積立は、将来支払う見込み額を弁護士の預かり金口座などに毎月積み立てるものです。
再生手続き開始決定により、債権者への返済は禁止されているので、支払いはしていないはずです。
そうであれば、その分の余力があるはずなので、将来の支払い金額を毎月貯金できるはずです。
このような前提に立っています。
再生計画の提出時には、この積立の通帳明細などを出して、毎月余力があったことを示す必要があります。
この積立ができていないと、再生計画が認可されずに個人再生が失敗してしまうこともあります。
試験積立は法律で決められたルールではなく、再生手続き開始決定の法的な効果とは違いますが、運用として履行可能性の判断材料にされているので、再生手続き開始決定の事実上の効果ともいえるでしょう。
開始決定による競売手続の中止等
再生手続開始の決定が下されると、その効果として、再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分、または再生債権を担保とする留置権による競売手続は中止します。
仮に、すでに開始されていたとしても、手続きは中止します。
競売が停止するルールは、再生債権については、再生手続を通じてのみ行使できるようにする趣旨です。
あくまで再生債務者の財産に対するルールですので、保証人など、再生債務者以外の人に対しては中止されず、競売を実行することはできます。
また、裁判所は再生に障害がないと認める場合には、中止した強制執行等の手続の継続を命じることもできます。
逆に、再生のために必要と認める場合、再生債務者の申立て等により、中止した強制執行等の手続の取り消しを命じることもできます。この場合、担保を立てさせることもあります。
個人再生と訴訟
再生手続開始の決定があっても、再生債権に関する再生債務者の財産関係の訴訟手続は中断しません。
続きます。
本来、再生債権については再生手続の中で調査すべきですが、訴訟手続で確定しても問題ありません。
再生債権者が裁判で勝訴判決を得て債務名義を取得しても、再生手続中は強制執行はできません。
そのため影響はないと言われます。
また、訴訟手続で確定した再生債権も、再生計画認可決定の確定によって権利が変更されます。
個人再生の準備中に債権者から訴訟を起こされてしまった場合には、なるべく早く再生開始決定をもらう必要があります。
個人再生後に裁判所の許可が必要な行為
民事再生法41条には、裁判所は、再生手続開始後に、必要と認めるときには、再生債務者の次の行為を裁判所の許可を要するとすることができます。
①財産の売却
②財産の受け入れ
③借金
④法律49条1項(双務契約に関する規定)による契約の解除
⑤訴訟の提起
⑥和解または仲裁契約
⑦権利の放棄
⑧共益債権、一般優先債権または法律52条に規定する取戻権の承認
⑨別除権の目的の返還
⑩その他裁判所が指定する行為
個人再生は、小規模な債務整理を簡単に行おうとするものです。
開始決定があっても、自己破産のように財産管理処分権を失いません。財産を処分させられるものでもないですし、自分で管理できるのが原則です。
ただし、上記のように、許可事項とされた場合には、処分ができなくなりますので、注意が必要です。
裁判所の許可を得ずに再生債務者が行った行為は無効となります。
実際の運用としては、このような許可事項とされることはまれでしょう。
再生手続き開始後の契約関係のルール
双務契約がある場合、再生債務者とその相手方が、再生手続き開始時点で、双方ともがまだその履行を完了していない場合、再生債務者は契約を解除したり、自分の債務を履行して相手方の債務の履行を要求することができます。
相手は、相当の期間を定めて、解除するのか履行請求するのか催告することができます。なお、労働契約は別です。
破産手続きでも同様のルールがあります。
再生債務者に対して継続的給付義務を負う双務契約の相手方は、再生手続き開始前の給付に関する再生債権についての未払いを理由に、再生手続き開始後のその義務の履行を拒否することはできません。未払いの再生債権は、再生計画により減額、契約は続くことになります。
再生手続開始決定後の相殺
再生債権者からの相殺については制限があります。
以下の状況では相殺はできません。
・再生手続き開始後に再生債権者が再生債務者に対して新たに債務を負ったとき(法93条1項1号)
・再生債権者が支払停止等の存在を知りつつ再生債務者に対して債務を負ったとき。ただし、その負担が法律による原因に基づくとき、再生債権者が支払停止等の存在を知った時より前に生じた原因に基づくとき、または破産手続開始、再生手続開始、整理開始あるいは特別清算開始のいずれの時よりも1年以上前に生じた原因に基づくときは、例外。
・再生債務者に対して債務を負った者が再生手続開始後に他人の再生債権を取得したとき(法93条の2第1項1号)
・再生債務者に対して債務を負った者が支払停止等の存在を知りつつ再生債権を取得したとき。ただし、その取得が法律による原因に基づくとき、再生債権者が支払停止等の存在を知った時より前に生じた原因に基づくとき、または破産手続開始、再生手続開始、整理開始あるいは特別清算開始のいずれの時よりも1年以上前に生じた原因に基づくときは、例外(法93条の2第2項3号)。
個人再生の相談については、事例豊富なジン法律事務所弁護士法人に、ぜひご相談ください。