FAQ(よくある質問)
FAQ(よくある質問)
Q.個人再生での債権額はどう決まる?
個人再生手続きでは、債権が減額されますが、そもそも債権額はどうやって決まるのでしょうか。
債務者と債権者で主張が違う場合には、どうやって確定するか、その流れを解説します。
この記事は
- 個人再生を検討している
- 債権者の中に争っている人がいる
という人に役立つ内容です。
個人再生手続きでの債権金額確定
個人再生手続きでは債権者の金額をさせる必要があります。
確定した金額に対して再生計画で何パーセントの減額をするのかなど決めることになります。手続きの中でまず金額を確定する必要があるのです。
ただ、個人再生手続きでは、再生債権の確定手続は通常の民事再生とは異なり、手続内確定のみとされます。手続内確定とは、個人再生の手続きの中でだけの金額がするという意味です。後に民事裁判などで金額が変わることもあり得るのです。
個人再生での債権調査や評価結果には、民事裁判での確定判決と同等の効力や強制力はありません。ここが通常の民事再生とは違う点です。
個人再生は、本来の民事再生よりも簡易化した手続きです。厳密な債権調査よりも手続の迅速性が重視されるため、債権の確定手続きも簡易化されています。
個人再生の金額確定の流れ
個人再生での債権者の金額確定の手続きは次のとおりです。
・まず、申立人が債権者一覧表に金額を記載します。これが債権者に届きます。
・債権者は、債権届出期間内に債権を届け出ます。債権者一覧表に記載された人については、債権届け出がない場合、届出期間の初日に債権者一覧表の記載と同様の内容で届け出られたと見なされます。つまり、債権者一覧表の金額通りでいい場合には債権者は債権届を出さなくて良いのです。債権届を出せば、再生手続き開始決定までの正確な利息・遅延損害金も請求できますが、手続きが面倒だったり、郵便費用がかかるので少額の債権者についてはそこまでしないことも多いです。
・届け出られた債権に対しては、決められた異議申立て期間内に、債権届出者と異議を留保した再生債務者は異議を申し立てることができます。
・異議があった再生債権については、評価手続によってその有無と金額が判断されます。
・評価の申立てについては、無名義債権は再生債権者、有名義債権は異議を申し立てた者がそれぞれ申し立てなければなりません。ここでの名義は、債務名義の話です。つまり、裁判所の判決などを持っているかどうかです。
・評価の申し立てがあった場合には、裁判所は、再生債権の有無および金額を定めるために指定された個人再生委員の意見を聴くことになります。評価の申し立てをするには個人再生委員の費用の負担が発生するので、そのコストを吸収できるかどうかで判断する必要があるでしょう。
債権届出・異議申述期間の公告・通知
裁判所は、小規模個人再生または給与所得者等再生の手続開始決定を下したとき、即座に、決定の内容、再生債権の届出期間、申告された再生債権に対して異議を唱えることができる期間を公告します。
再生手続開始決定は官報公告されますが、そこに記載されます。
債権者一覧表に載っている債権者には、この決定が送られ、通知されます。
再生債権の届出内容
再生債権の申告には、以下の項目が必要とされます。
・債権の内容と発生原因
債権の詳細としては、貸し付け、立替金、売掛金、手形金、契約金など、法的性質が特定できる範囲で記載します。
また、金銭債権の場合、その金額、弁済期限、利息・損害金の利率などを記載します。
債権の発生原因については、債権が発生した原因とその日付を記載します。
・債権届と債権者一覧表の関係
債権届の内容と申立時に提出された債権者一覧表との記載が一致しない場合、債権届の内容がどのような性質かを確認する必要があります。
債権者一覧表の金額を修正するものなのか(遅延損害金の追加請求等)、別の債権を追加で届け出るのか、他の債権への差し替えなどか等です。
これらを発生原因等の記載で特定します。債権届出を見ると、通常は、債権者一覧表の金額を番号等で特定し、それがあるのか存在しないのか等を記載します。
・別除権不足見込額
・再生債権者の氏名、住所、代理人の情報
再生債権者の氏名または名称、住所、そして代理人の氏名及び住所を記載します。再生債権者が法人である場合、法人の代表者の氏名と住所も記載し、代表権を証明する資格証明書の提出が求められます。また、再生債権者またはその代理人の郵便番号、電話番号、ファクシミリ番号も必要です。
・法84条2項に掲げる請求権が含まれる場合
再生手続開始後の利息請求権、再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権、再生手続参加の費用の請求権も再生債権ですが、これらは再生計画において平等原則の例外として別途規定することができます。
・執行力ある債務名義または終局判決がある債権の場合
評価申立人が異なるため、有名義債権である場合はその旨を申告することが必要です。この場合には、執行力ある債務名義の写しまたは判決書の写しを添付します。
・再生債権に関し再生手続開始当時訴訟が係属する場合
その訴訟が係属する裁判所、当事者の氏名または名称、及び事件の概要を記載します。
債権届出が遅れた場合は?
個人再生では債権者は、債権届をすることができます。債権届については期限が決められています。この期限が過ぎてしまった場合、どうなるのでしょうか。
債権者が、自身の責任によらない理由で債権届出の期限内に届出ができなかった場合、その理由が解消した後の1ヶ月以内に限定して、その届出の補完ができるとされています。(民事再生法95条1項)。この際には、債権届出書には、届出が行えなかった理由、その理由が解消した時期を明記することが求められます。
なお、、債権届出期間が経過した後に生じた再生債権についても、その権利が発生した後の1ヶ月の間に届け出を行うことが可能です。想定されるケースとしては、再生債務者が双務契約を解除、契約の相手方が損害賠償請求権を取得したようなケースが挙げられます。
このような届出の補完は、個人再生の再生計画案が書面による決議に付する旨の決定がされた場合や給与所得等再生による意見聴取決定がなされた後ではできなくなります。通常は、債権届出の期間から再生計画間の提出期限まで一定期間の猶予があります。それが過ぎてから書面付議決定などがされることが多いです。ここまでオーバーしてしまうと追加はできなくなります。
遅れた債権届があった場合、その再生債権についても、異議を出したり、評価の手続きをするか確定手続きをする必要があります。そこで、裁判所は、遅れた債権届がなされた場合、債務者等が異議を述べるための特別な異議申し立て期間を設けます。通常の債権届と同じように、その期間内に、異議を述べることができますし、異議があると、評価の手続がされます。
債権者一覧表への追加
逆に、債務者が、個人再生申立ての時に提出した債権者一覧表に、債権者を入れ忘れていた場合も問題になります。
債権者が債権届出をしなかった場合、再生債務者は再生計画とは別に支払う必要があります。
法律では、再生計画の認可確定により権利変更となり、劣後的な扱いになりますが、別に支払うこととなり、負担が増えます。
債権者からの遅れた届出は認められる可能性がある一方で、再生債務者からの遅れた債権届出は認められていません。
一応、再生手続開始決定前であれば、債権者一覧表を訂正することで、追加が認められる運用が多いです。しかし、開始決定が出たあとは認められていないので、もし、忘れていた債権者がいた場合には、その債権者に個人再生のことを伝え、債権者側から、債権届をしてもらうように動く必要があります。
債権者の名義変更届出
債権者は、個人再生手続中でも、名義変更が起きることがあります。
合併・社名変更により、当事者の名称が変わるほか、代位弁済により保証会社が権利を取得したり、債権譲渡がされる場合です。
再生債権を取得した人は、債権届出期間が過ぎた後でも、名義変更の届出をし、再生債権者となります。
名義変更の届出書には、名義変更の社名・住所等のほか、証拠書類(法人の全部事項証明書、債権譲渡通知、代位弁済通知等)の写しを提出します。
通常は、すでに債権届がされた後は、旧債権者と新債権者の連名での届出を出します。
承継届とすることが多いでしょう。すでに債権届がされていることから、代位弁済者が承継する額は、代位弁済額ではなく、元の金融機関からの届出額となるはずです。
債権額の評価手続
基本的に、再生債権については、個人再生手続きが開始された日の時点での債権額を基準にします。
債権届をすれば、ここまでの利息・遅延損害金を正確に算出して届け出ることができます。
その後、届出債権に異議が出されると再生債権の評価手続に移ります。
評価申立てがあった場合には、裁判所は個人再生委員の意見を聴くことが原則となります。
再生債権の有無および金額を定めるにあたっては、再生債権者の提出した証拠と、再生債務者及び再生債権者が述べた事実等を検討して個人再生委員が意見書を書き、裁判所が判断します。
実務上は、多額の個人債権者などがいれば別ですが、貸金業者の債権ではほとんど使われません。
ジン法律事務所弁護士法人でも、過去に数回の取り扱いがある程度の手続きです。
個人再生の相談については、事例豊富なジン法律事務所弁護士法人に、ぜひご相談ください。