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FAQ(よくある質問)

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Q.ハードシップ免責とは何ですか?

個人再生では、再生計画案どおりの支払をする必要があります。

再生計画案のとおりに支払ができなくなった場合、債権者からの申立によって、再生計画の取消しがされてしまうことがあります。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2023.7.6


支払ができなくなってしまうことは問題ですが、勤務先が倒産したり、病気などの事態によって支払ができなくなってしまう人もいます。

このような人の救済措置がハードシップ免責制度です。

このハードシップ免責では、

・各債権の4分の3以上の弁済を追えていること
・責められない事情で再生計画を遂行することが極めて難しくなったこと

などの一定の要件を満たした場合に、未払分の支払義務を免除してもらえます。

ハードルはかなり高く、一時的な病気やリストラになっても再就職ができる場合には、認められる可能性が低い制度ですが、要件を満たす人は、このような選択肢があることは覚えておいて相談してみると良いでしょう。

 

ハードシップ免責の要件

個人再生法では、再生計画に記載された指示に従い一部の再生債権を免除し、その後の再生債権に対する責任を果たすことが再生債務者に求められます。

ただし、再生計画の遂行中に下記の4つの要件全てを満たす場合には、裁判所は再生債務者の申し立てに基づき免責決定を下すことが可能となります。民事再生法235条に書かれています。

1. 再生債務者が何らかの非責任事由により再生計画の遂行が極めて難しくなったこと。
2. 変更後の各基準債権に対して4分の3以上の弁済が終わっていること。
3. 免責決定が再生債権者全体の利益を害するものでないこと(清算価値以上の支払)。
4. 再生計画を変更することが非常に困難なこと。

ハードシップ免責の申立ては、再生債務者のみが行うことができます。

申立書には、要件を満たすことをを具体的に記述するほか、その証明書類を添付する必要があります。

ハードシップ免責の申立てがあった場合、裁判所は再生債権者の意見を必ず聞く必要があります。

 

ハードシップ免責決定の影響

免責決定が出された場合、裁判所は再生債務者および届出再生債権者にその決定文とその理由の要約が記載された書類を送る必要があります。

ハードシップ免責が適用されるのは全ての再生債権です。

しかし、非減免債権は免責されません。

ハードシップ免責が確定しても、担保権者の保有する担保権、保証人や連帯債務者への権利、物上保証人の責任には影響を及ぼさず、そのまま残ります。

 

住宅ローンとハードシップ免責

住宅ローンがあり、住宅資金特別条項が含まれている再生計画が認められた場合、当該住宅資金融資債権に対するハードシップ免責の適用が問題となります。

一般的には、住宅ローンにも適用されると解釈されています。文献や弁護士のサイトでも、そのような解説が多いです。

民事再生法235条5項では、「免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)の全部についてその責任を免れる。」とあり、住宅ローンが除外されていないからです。

ただし、住宅資金特別条項の効力がなくなります。

そのため、別除権の行使として抵当権が実行できます。これにより競売となります。自宅を維持するのは難しいということです。自宅を失った後の担保不足分のローンが対象になるとされています。

ただし、2008年の情報では、競売後の住宅ローンについてハードシップ免責を利用しようとしたものの東京地裁で、住宅ローンはハードシップ免責の対象にならないと回答されたとの報告があります。

 

また、実際に、競売後の住宅ローンにハードシップ免責を使ってみようとすると、色々と問題がありそうです。

4分の3以上の弁済要件について、住宅ローンをどのように取り扱うのか、民事再生法上は不明確です。

弁済要件については、235条1項2号で、

「第二百三十二条第二項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第三項ただし書に規定する各再生債権に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。」とあります。

232条2項は、再生計画により減額された通常の債権ですので、住宅ローンは該当しません。

3項ただし書きは、落ち度がない無届出債権です。3項は劣後債権の規定ですが、但し書きは、例外規定です。無届出に落ち度がなかった債権者や評価申立などで争っていた債権者の規定です。

このような劣後の例外債権も、4分の3の支払要件の対象になります。

さらに、235条7項では、住宅ローン債権について3項の読み替え規定があります。3項但し書きには、住宅ローン債権も劣後の例外規定になるとされています。

読み替え「当該変更後の権利が住宅資金特別条項によって変更された後の住宅資金貸付債権であるときは、この限りでない」

そうだとすると、住宅ローン債権も4分の3要件の対象になりそうです。

仮に、住宅ローンも対象になる場合、4分の3はどの部分を示すのかハッキリしません。普通に考えて抵当権実行、競売により弁済された部分は、担保の対象だったので、この要件から外されそうなものです。しかし、無担保部分の4分の3が返済されたうえで住宅ローン残債務を対象にしたハードシップ免責申立を使うシーンは想定しにくいです。

条文解釈に関する文献を調査しましたが、今のところ、この点はクリアできていません。

そのため、実際に競売後に住宅ローン残債務について、ハードシップ免責が使われた事例があれば、教えてもらいたいところです。

 

 

ハードシップ免責が使えない場合

再生計画による支払ができなくなったものの、要件を満たさずにハードシップ免責の申立ができない場合は、どうすれば良いでしょうか。

借金自体は残ってしまうことになるので、放置しておけば、債権者からの再生計画取消し申立がされる可能性が高いです。そうすると、減額された借金も戻ります。

支払不能となるでしょうから、再生計画の支払すらできないとなると、解決のための選択肢は自己破産ということになるでしょう。

 

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