FAQ(よくある質問)
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Q.個人再生の準備中に裁判や差し押さえはされる?
個人再生の準備中に、債権者から裁判・訴訟を起こされることがありますので、今回は、その関係を解説します。
対策としては、個人再生の申立を早くしましょう、ということになります。
この記事は
- 個人再生準備中に訴訟を起こされてしまう?
- 裁判を起こされたので、個人再生の相談に行きたい
- 給料の差押えだけは避けたい
という人に役立つ内容です。
動画での解説はこちら。
個人再生の手続中に債権者から裁判を起こされる?
個人再生手続の相談の中で、非常に心配される方が多い内容に、債権者からの裁判という点があります。
個人再生手続は自己破産と並んで、裁判所に申し立てをして認めてもらう借金解決制度です。
個人再生手続の場合は、借金をゼロにするのではなくて、一定金額に減額してそれを分割して払っていく制度です。
法人でも民事再生の制度がありますが、その個人版ということで位置づけられているのが個人再生です。
この個人再生を申し立てをする前に、債権者から民事訴訟、裁判を起こされてしまうということがあります。
訴訟・裁判で判決まで進むと、給料を含めた財産を差し押さえられてしまうリスクが出てきますので、その解説をしておきます。
個人再生手続きの流れ
個人再生と債権者からの裁判については、それぞれの手続きの流れによって対応がかわります。
まず個人再生の手続きの流れをみましょう。
弁護士に頼むケースでは、借金で困って相談、依頼をします。
依頼をすると受任通知という書類を債権者に送ってもらって返済がそこで止まります。
そのうえでいろいろと書類などの準備をして裁判所に申し立てをするという流れです。
最初の審査が通れば、裁判所で再生手続き開始決定が出ます。
その後に、債権額の調査や計画案の提出など手続きがいろいろあり、再生計画が認可されると減額効果が出てきます。
その後、3年や、特別な事情がある場合には5年まで期間を延ばして、分割払いで払っていくという流れです。
民事裁判の流れ
これに対して民事訴訟、債権者から裁判を起こされた場合の流れは次のとおりです。
まず、訴えられたら、自宅に裁判所から訴状と呼び出し状が届きます。
弁護士に個人再生を依頼していても、自宅に届きます。個人再生の書類などは弁護士宛に届きますが、民事訴訟に関する最初の書類は自宅に届いてしまいます。
裁判所からは特別送達と呼ばれる郵便で届きます。
この呼び出し状は、裁判の第1回弁論期日に来るよう呼び出すものです。
その期日で主張があれば出してくださいと記載されています。
訴えられた被告側の主張を書面で出すのが答弁書というものです。
期日に出席もせず、答弁書も出さなければ、基本的に原告の言い分通りの判決がすぐに出ます。
答弁書などで、色々と争ったりすれば、期日が何回か開かれます。
その後に裁判が、争点が整理され、主張も出尽くした、判断して良いと考えると、判決が言い渡されます。
一応答弁書を出したけれども、大した内容じゃない場合には短期間で判決が出されることも多いです。
この判決が出ると、債権者である原告側はそれを使って、被告の財産を差し押さえることができます。
判決が出た後に、控訴して争うこともできますが、通常、金銭の請求をする判決では、確定前でも差し押さえはできる仮執行宣言がついています。この場合、差し押さえを完全に止めるには、けっこうなお金がかかります。
差し押さえについては、給料の差し押さえと、預金口座の差し押さえがよくされます。
依頼前に債権者から訴えられている場合
このように2つの手続きがあって、それぞれの手続きが、どのタイミングで重なるのかによって、その影響が変わってきます。
まず、債権者からの裁判が、弁護士への個人再生の依頼前に起こされてしまっているパターンがあります。
「訴えられたので、なんとかしなきゃ」ということで、弁護士に依頼をしたというパターンです。
弁護士から受任通知を送っても、業者も費用をかけて裁判を起こしているので、この訴えは止まらない、取り下げられないのが普通です。良心的なクレジット会社などは取り下げてくれることもあるのですが、極めて例外的。
そのため、この裁判で判決まで進むと、差し押さえのリスクが高まります。
債権者によっては、弁護士からの受任通知があることで、差し押さえまでは動かないところもありますが、そのような善意に期待するのは危ないです。
なるべく早く、個人再生の申立てを進めなければなりません。
個人再生の申立てをして、再生手続き開始決定まで進めば、法律的に差し押さえが禁止されます。
通常、個人再生の申し立てをして裁判所の事件番号がつくと、通常、審査の一定期間がすぎれば、再生手続き開始決定が出るので、申立までされた段階で、差し押さえに動いてくることは少ないです。
そのため、個人再生申し立てをなるべく急ぐというのが対応策になってきます。
弁護士依頼後に裁判を起こされることも
次に、個人再生の手続きとの流れでいうと、弁護士に依頼をして受任通知により支払いを止めた、それで督促も来なくなった、という段階で、裁判を起こされるというケースもあります。
これは、債権者の方で個人再生の申し立てまで待てないということで民事訴訟・裁判を起こしてくるという話です。
会社によっては、何ヶ月か待ってそれでも個人再生の申し立てがなければ、裁判を自動的に起こすという運用のところもあります。
債権者からすれば、本当に個人再生の申立をするかどうかわからないので、費用をかけて裁判を起こしておく、申立がされなければ、差し押さえに動くという方針です。
受任通知は、督促を止める効果はあるものの、法的に訴訟提起まで禁止するものではありません。支払いが止まっている間も、法的には遅延損害金が発生し続けているものです。事実上、止まっているだけにすぎないのです。
このような業者は、多くはないのですが、申立費用の分割払いの場合や、必要書類の準備の関係で、申立が遅れてしまうと、裁判を起こしてくる業者が出てきます。
2022年あたりで、このような動きに出やすい業者が、SMBCモビット、楽天系ですね。
準備に1年とか、長期間かかると、新生フィナンシャルやエポスカードが裁判に動いてくるケースもあります。
中小貸金業者ではフクホーという大阪の業者は、非常に早く動き、容赦なく差し押さえをしてきます。
このような業者から借入をしている場合には、個人再生の申立を急ぐスケジュールで進めた方が無難でしょう。
差押えをされやすい財産
債権者が債務者の財産を差し押さえるには、裁判所の判決などが必要です。
この判決が確定した場合には、差押えに動いてくることがあります。
差し押さえる場合には、債権者は、何を差し押さえるのか特定して申立をします。
貸金業者に多いのが、給与差押え、預金口座の差押えです。
差し押さえるには、相手の財産を特定することが必要です。保険や株式などの情報は貸金業者が持っていないことがほとんどですので、差押えをしにくい財産です。
これに対し、給与などは、借入時に勤務先を申告させることから、その職場で働き続けている場合、差押えをしやすい財産になります。給料が差し押さえられた場合には、裁判所から職場に差押命令が届くので、勤務先には、差押があったという事実が伝わってしまいます。
差押えには、自宅内の動産差押えもあります。ただし、差押えが禁止されている家財道具も多かったり、執行官のコストもかかるため、貸金業者が動産差押えを個人に向けてすることはほとんどありません。
差押えを回避するためのポイント
個人再生の手続中に差押えられるのは避けたいところです。
給料の差押えがされてしまうと、職場に伝わるだけではなく、手取り収入が減ってしまいます。
生活も大変になり、個人再生の前提が崩れかねません。
裁判を起こされない方が良いですが、万が一、裁判まで起こされた場合、この差押えを避けることが大事です。
そのポイントとしては、裁判での判決よりも早く
個人再生の申立を裁判所にすることです。
厳密には、開始決定で差押え禁止になりますが、申立をして事件番号が付けば、その後に動いてくる業者はほとんどいないことを前提にしています。
判決よりも申立を早くする、タイムリミットは判決だと考えておけば安心です。
個人再生の申立後、裁判は中断しない
個人再生の申立後、債権者からの裁判がまだ判決まで進んでいない場合には、裁判を取り下げてくれという交渉します。
これに応じて取り下げてくることもありますが、業者によっては判決まで求め、取り下げないという対応をしてくることもあります。
判決が出ても、再生手続き開始決定まで出ていれば差し押さえの心配はありません。
債権者の裁判については、個人再生の再生開始決定が出ても、裁判自体は中断しません。
裁判所で判決まで出すこと自体は可能です。
個人再生の申立が間に合わずに給料を差押えられてしまったという場合には、個人再生の申立後に、差押えの中止命令の申立、強制執行手続停止の上申書などで対応します。
債権者の裁判で金額が争いがある場合はしっかり争う
起こされた裁判について、貸金業者やクレジット会社の場合には、金額に争いがあるということはさほど多くはないかと思います。
せいぜい延滞金や利息制限法の計算とかで多少の差であることが多いです。
しかし、個人債権者だったり、取引先の債権だったりすると、金額に争いがあるというケースもあります。
金額に争いがあるのであれば、裁判では、しっかり争っておかないと、納得しない金額が確定してしまうこともあります。
裁判で確定した債権額を、個人再生の手続きでいくらで評価するのかと問題になったりするケースも多いです。
例えば債権者は1000万円と主張していて、こちら側は300万円だと主張しているとき、700万の差があるというような場合には、しっかり民事裁判で争っておかないと1000万円という判決が出されてしまいます。
この判決が出ると、個人再生手続きで再生計画案をつくる際に、最終的には1000万円を基準にせざるを得なくなります。
判決で金決められた金額をさらに争うという場合には、申立人側、金額を争う側が手続き費用を負担して争う必要があるのです。これが評価の申立という手続きです。
そのため、債権の金額に争いがある場合には、裁判の取り下げ交渉だけではなく、金額も民事裁判でしっかり主張しておく必要があります。
再生計画認可後の裁判では減額の証拠提出
再生計画認可確定まですると、法的に借金が減額される効果が出てきます。
減額幅は、人によって違いますが、よく言われるのは借金が5分の1に減るという話です。
このような減額効果が出るタイミング、計画案の認可確定時期で、まだ裁判が続いていて、判決が出ていないという場合には、個人再生による減額効果が出たことを民事裁判で示す必要があります。
再生計画案や認可決定確定の証明書などを証拠提出することになります。
民事裁判の判決にも反映してもらうためです。
判決で命じられるのは、1000万円ではなくて減額された200万円のような金額に、再生計画案を反映した内容となります。さらに、支払い時期についても再生計画案どおりの分割払いとなります。
このように民事裁判を起こされるリスクは、個人再生手続きを弁護士に依頼した後も続きます。
受任通知によって支払いがなくなったからといって安心せず、しっかり準備をすすめるようにしてください。
裁判や差押えを回避するための対策は、個人再生の申立を急ぐことです。不安な場合には、担当弁護士に相談してみてください。
なお、ジン法律事務所弁護士法人では、特殊事情があって、依頼から申立まで2週間程度で進めた事件もあります。ここまで短期間だと申立後にフォローが必要になるのですが、早期申立が必要な場合には、ご相談いただければと思います。
個人再生については、事例豊富なジン法律事務所弁護士法人に、ぜひご相談ください。