FAQ(よくある質問)
FAQ(よくある質問)
Q.個人再生の申立をする管轄裁判所は?
個人再生などの裁判所を使った手続きでは、管轄裁判所も大事です。
裁判所によって運用が違うため、その運用を理解している専門家に依頼した方がスムーズだからです。
必ずしも、いま住んでいる場所、とはならないので、確認をしておきましょう。
動画での解説はこちら
個人再生と管轄裁判所
個人再生手続は裁判所に申し立てをして借金を大幅に減額してもらう制度。
元金の一部だけ払うことによって、残りをカットしてもらえる制度です。
ここでは、裁判所への申し立てが必要です。
この点に関し、どこの裁判所に申し立てをするのかという問題があります。
これを管轄裁判所と呼びます。
自営業者の個人再生と管轄裁判所
管轄裁判所は、自営業者であるか、そうでないかで変わってきます。
個人再生は、ある程度の安定収入があれば使える制度です。
会社員はもちろん、自営業者でも利用可能です。
ただし、自営業者は、個人再生の2つの手続きのうち、給与所得者等再生手続きは利用できず、小規模個人再生の利用のみ可能です。
給与所得者等再生手続きとは違い、債権者の過半数が反対すると通らないというリスクがありますが、個人再生手続きの大部分を占めるのが、小規模個人再生手続きの方なので、それほど問題は起きません。
自営業者の中で、営業所を持っている人は、民事再生法によって営業所の所在地が管轄裁判所と決められています。
そこで、営業所の所在地を管轄する裁判所へ個人再生の申立をすることになります。
たとえば、神奈川県に住んでいても、東京に営業所がある事業者であれば、東京地方裁判所等に管轄があることになります。
個人再生の管轄裁判所による影響は?
裁判所が違うとなにか影響があるのか、と疑問に思うかもしれません。
実は、個人再生もそうですが、多くの法的手続きは、裁判所によって運用が違うのです。
それにより、必要費用が変わったり、必要書類も違ってくるのです。
特に大きな運用の違いが、個人再生委員です。
これは、個人再生手続きについて助言、監督したりする立場の人で、裁判所が選びます。個人再生委員が選ばれる事件では、その選任費用が必要になってくるのです。
その金額も裁判所によって違います。15~18万円程度のことが多いですが、かなりの金額が必要になってきます。
ちなみに、神奈川県では、2020年の時点で、個人再生委員については、弁護士が申し立て代理人となっている事件では原則選任しない、ただし、問題ある事件では選任するという運用です。
数年レベルで見ると、個人再生委員が徐々に選任されやすくなってきています。
なお、自己破産の管財人選任も同じように増加傾向にあります。
これに対し、隣接している東京都では、すべての個人再生事件で個人再生委員を選任する運用です。
これにより費用が余計にかかるほか、手続きにかかる時間などもより長くかかる運用です。
このように、裁判所によって運用が違い、費用、時間、必要書類が変わってきますので、どこの裁判所で申し立てができるか、という管轄問題は申立人にとって重要な問題なのです。
自営業者以外の個人の管轄
自営業者ではない、それ以外の個人に関しては、個人再生の管轄裁判所は、普通裁判籍がどこにあるかによって変わってきます。
普通裁判籍に関しては、原則として住所地。
そして住所がないような場合、住所が知れないような場合は居所となります。
基本的に、個人再生手続を申し立てるということは、住所が知れないということは、おそらくないので、住所地を管轄する裁判所が管轄の裁判所となります。
住所とは?
この住所とは何かというと、生活の本拠ということで実質主義が採用されています。
形式ではなく、実質です。
つまり、住民票がそこにあるからといって、生活の本拠がそこになければ住民票上の住所は、ここで言う「住所」ではないという扱いになります。
実際に、どこが生活の本拠になっているのかと生活の実態を見ていく話になります。
住民票上の住所以外に住所がある場合には、そこに住んでいることを示して、その実際に住んでいる場所の管轄裁判所に個人再生の申立をするところからスタートします。
複数の住所がある場合は?
住所というと一箇所であるのが当然と思いがちですが、必ずしもそうではありません。
住所に関しては一つではない可能性もあります。
複数の住所を認めるという考え方が今は主流です。
2カ所に住所があるということも認められます。2拠点生活なども話題です。
その場合には2ヶ所の住所地を管轄する裁判所が、それぞれ管轄裁判所になり、そこから選択できることになります。
いずれも管轄があることになるからです。
引っ越し予定という場合は?
住所が2箇所というと、引っ越しの予定があるから、そちらの裁判所で申し立てをしたいという人がいます。
しかし、実質主義からすると、実際に生活の本拠がなければなりません。
引っ越し予定であるというような場合には、引越し先の住所はまだ「住所」ではないとされるでしょう。
実質的な生活がないため、住所とはいえないでしょう。
引越し先の裁判所に申し立てができるかというと、それは認められないという結論になります。
この場合、実際に引っ越しをしてからの申立となるでしょう。
一定期間の単身赴任
住所が複数のケースとして、例えば1年のうち4ヶ月だけ社宅での生活、1年間のうち8ヶ月を自宅というように、分かれるケースもあります。
仕事の形態にもよりますが、このような場合は両方に生活の本拠があると考えられ、複数の住所とされる、管轄裁判所もどちらかを選択できるという考え方が主流のようです。
その場合は、どちらの運用の方が自分にメリットがあるか、専門家との打ち合わせができそうかなどの事情で比較して決めれば良いでしょう。
文責:弁護士石井琢磨(神奈川県弁護士会所属)
個人再生については、事例豊富なジン法律事務所弁護士法人に、ぜひご相談ください。