裁判例
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給与所得者等再生手続と再生計画の修正事例
福岡高等裁判所平成15年6月12日決定です。
再生計画が給与所得者等再生手続の可処分所得要件を満たさないことが判明した場合であっても、再生計画を修正するなどの方法により認可決定を受ける余地があると判断した決定です。
事案は次のとおり。
給与所得者等再生手続によって、再生計画案が出され、認可決定が出ました。
ところが、債権者の中には、保険会社の契約者貸付が含まれていました。保険会社は、この貸付金と保険金は相殺されていて、債権がないと主張。
そのため、この貸付金の存在を前提に作成された再生計画案は、可処分所得要件を満たさないことになりました。そこで、認可決定を取り消すかどうか争われたというものです。
給与所得者等再生では、支払額について小規模個人再生手続の要件である
・最低弁済額(負債の一定割合)
・清算価値(財産以上の支払)
の2つに加えて、給与額や居住地域、扶養家族などから算出される
・可処分所得要件
が加わります。
可処分所得の2年分以上を支払わないといけないとされています。
今回のケースで、福岡高裁は、再生計画案がこの要件を満たさないため、認可決定は取り消すことになるものの、取消し後、そのまま不認可にすのではなく、再生計画案を修正し、もう一度、意見聴取手続、認可決定を受ける余地があると判断しました。
認可決定の取消し→不認可となり、個人再生が失敗した場合、再生債務者としては、もう一度、再生手続の申立からやり直すことになると予想されますが、これは、時間・費用の無駄ではないかという視点です。
本来、給与所得者等再生では、再生債権者に対する意見聴取決定時までです。
しかし、給与所得者等再生ではなく、通常の民事再生手続では、再生債権者に不利な影響を与えないときは、債権者集会で裁判所の許可を得て、再生計画案を変更できるとされています(民事再生法172条の4)。
今回のケースでも、債権者にとって不利な修正ではないと見込まれるので、その点も実質的に考慮したうえでの判断と思われます。