ケース紹介
法人破産と個人再生ケース紹介
ケース紹介111 Sさんの事例
伊勢原市在住 ( 会社員 / 50代 / 男性 )
借入の理由:法人破産の保証 債務総額3000万円
伊勢原市にお住まいの50代の男性会社員のケースです。
法人の代表者であったところ、法人の収益が悪化し、倒産。自身は個人再生を希望しているという相談でした。
借金の減額幅
法人の保証債務を含めて、住宅ローン以外の債務は、3000万円。
これを300万円まで減額できています。
法人破産と個人再生
法人の代表者で、法人債務で支払ができない金額となり、法人は自己破産の申立。
代表者は、自宅を残したいということで、就職後に個人再生により解決した事例です。
このように、法人破産と代表者の個人再生という方法は、自宅を残したい場合に、よくある解決方法です。
個人再生が可能な要件
個人再生には、いくつかの要件があります。
法人破産とのセットで使う際には、以下の注意が必要です。
債務総額5000万円要件があります。個人再生が使える債務総額は、5000万円までという要件です。
住宅ローン条項を使う場合の住宅ローン額は含まれませんが、代表者自身の借金以外に、法人の保証債務も含みます。
多額の融資を会社で受けて、代表者が連帯保証しているような場合には、5000万円要件に気をつける必要があります。ここには、遅延損害金も含まれますので、金額が微妙な場合には、早めに個人再生申立を進める必要があるでしょう。
自宅の抵当権要件
住宅ローン条項を使った個人再生の要件には、自宅に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと、というものがあります。
個人再生では、住宅ローンだけは支払いができますが、他のローンは止めることになります。他のローンで抵当権が設定されていたら、結局、競売にかけられてしまうリスクがあります。
法人代表者の問題では、法人の債務の保証人になる際、自宅を担保に入れる、抵当権を設定していると、この要件で引っかかります。
自宅の登記情報を確認するようにしましょう。
個人再生の収入の要件
法人代表者の個人再生では、収入の要件も必要になります。
明確な規定ではありませんが、履行可能性の中で問題になります。
個人再生はある程度の安定収入があることが前提とされます。法人破産をするのであれば、代表者の役員報酬はなくなります。
そこで、新しい収入を一定期間もらっていることを示して、履行可能性があると主張するわけです。
代表者が就職するなどして、給与収入をもらい、そこから払えることを示すことが多いです。
筆頭債権者の動向、過半数要件
法人代表者の債務としては、法人の保証債務が大部分であることが多いです。
そして、法人の債務としては、メインバンクに偏った融資を受けていることが多いです。
この場合、法人代表者の債務として、メインバンクの債権だけで、金額の過半数という状態になっていることもあります。
個人再生のうち、小規模個人再生の決議では、過半数の反対があると再生計画案が認可されません。過半数には、頭数の過半数以外に、債権額の過半数の反対も含まれます。
メインバンクの債権者1社が金額の過半数の状態の場合、この債権者だけでも個人再生に反対すると、小規模個人再生は通らないことになります。とはいえ、法人破産後の転職間もない状態では、給与所得者等再生も使いにくい状態にあります。
債権者構成によっては、この点をどうするか検討する必要があります。
今回のケースでは、銀行債務を保証していた保証協会が過半数という構成でした。今回はリスクをとって小規模個人再生での申立をしましたが、再生計画案には反対されませんでした。
法人破産を先行
手続きとしては、法人破産を先行させることが多いです。
代表者自身が新しく仕事につくなど、安定収入を得る必要があるからです。
この事件でも、先に法人破産の申立をして手続きを終了させています。
法人については、業界の構造上、売上が減少し、借入金等の返済ができなくなり、破産をしたという経緯でした。
裁判所や事件番号も示しておきます。
代表者の債務内容
個人再生の申立でも、自分の債務内容を説明する必要があります。どのような使途だったのか等の報告です。
法人破産が理由の場合には、ほとんどが保証人になったことが原因との説明をすることになるでしょう。その経緯等を説明します。
本件では、会社債務を保証していたため、支払ができなくなったのですが、家族の意向もあり、何とか自宅を残したいと考え、自己破産手続をせず、個人再生手続の申立をしたという経緯を説明しています。
保証債務以外にも債務がある場合には、その経緯を説明しておきます。通常、法人破産をするような会社の場合には、最後の方では役員報酬ももらえていないことがほとんどです。そのため、生活費不足などで代表者個人による借金が増えていることも多いです。そのような場合には説明を入れておきます。
本件でも、法人破綻前にもらっていた役員報酬が月額10万円だったため、生活費が足りず、借入をして補っていたと説明しています。
交通事故と個人再生
法人破産後、交通事故の被害を受けたことで、個人再生の申立が遅れたという事情がありました。
預金口座にも交通事故における保険会社からの入金が複数ありました。
休業損害としての支払、賠償金の内払い、通院交通費、最終の示談金が入金されていましたので、それぞれ説明をしています。
主に、腰の傷害を負ってしまい、痛みが引かなかったため、治療が長引きました。
相談者としては、後遺障害があるのではないかと思い、後遺障害が認定されれば、借金も減るのではないかと思い、個人再生の申立を保留としていましたが、結局は非該当となり、仕方がないので示談を成立させたという経緯がありました。
まだ痛みがあり、薬を飲み続けていることから、今後も通院する可能性がある点を報告しています。医療費支出は、家計状況の履行可能性に影響を及ぼすものとなります。
預金口座から妻への送金
給料日後に、毎月妻名義の口座への送金がありました。
生活費を家に入れているものとのことでした。妻が、そこから、相談者名義の住宅ローンの口座に入金して支払をしたり、食費、生活費等を支払っている事実が確認できました。
一般的には、このように家族名義の口座への送金記録があると、送金先の口座も調査されることが多いです。単純に財産の名義を変えているだけという疑いが出てくるからです。
また、以前の個人名義の口座には、経営していた会社の関係の取引を代表者名義の口座でしていた取引もあり、その説明をしています。一人会社であったりすると、便宜上、法人口座ではなく、代表者口座を利用してしまうこともあり、明確な区分がされていないことも多いです。そのような場合、補足説明が必要になります。
個人再生と退職金
個人再生では現在の職場を退職した場合の退職金見込額を示す必要があります。
しかし、会社から証明書等をもらうのが難しいことも多いです。事案や裁判所によりますが、法人破産後の代表者個人再生では、就職して間もないタイミングでの申立となるのが通常です。このようなタイミングでは多額の退職金が出ないことは明らかですので、資料が不十分でも個人再生が認められることは多いです。
今回のケースでも、退職金制度はなく、就職時からそのような説明を受けていました。あらためて確認しましたが、ないと言われ、書類等は発行できないと言われました。
全従業員で10名程度の会社のためか、雇用時に契約書や条件を示す書類は交付されていないことを伝え、個人再生手続きは進められています。
夫婦の家計表
個人再生では家計に関する資料の提出が必要です。
夫婦では、原則として同一家計となるので、配偶者の収入・支出に関する資料も必要とされます。
しかし、法人破産があると、代表者の収入が減るなどして、夫婦の関係が悪化していることも多いです。そのような場合に、配偶者の協力が得られなかったり、抵抗を示されることも多いです。
場合によっては、配偶者にも同席してもらい、弁護士からの説明をして誤解を解くこともありますが、それでも協力してもらえないこともあります。
今回のケースでは、家計支出における電話料金については、申立人の携帯代金と妻の携帯代金が含まれていますが、申立人の口座から引き落とされているのは申立人の携帯代金のみでした。
数字が合わないため、確認したところ、妻の携帯代金については、申立人が口頭で確認をし、家計表にこれを加算して記載をしている内容でした。
申立人が妻に携帯代金の明細の開示を依頼したところ、携帯会社の明細はペーパーレスで出せないとのことでした。妻は携帯代金を自分名義のクレジットカードで支払っていますが、クレジット会社のカード明細の開示を依頼したところ、これは拒絶されたという経緯でした。
また、妻名義の保険証券については、保険証券を撮影した写真を提出できたものの、クリーンコピー等の提出は拒絶されています。保険料は妻の口座から引落になっており、いくつかの保険は妻が実母より引き継いだものとのことでした。
申立人の妻は、再生手続に理解を示す一方で、自身の情報を開示することについて非協力的な態度を取っており、申立人等が開示要求をすると、申立人に対して会社を倒産させたことや負債の責任追及を始め、離婚を切り出してくる状態でした。
このような状態を報告書にまとめて提出しています。
エポスカードから訴訟提起
法人破産処理と交通事故の件で時間がかかり、個人再生の申立までは相当に時間がかかってしまいました。
このような場合、債権者から裁判を起こされるリスクがあります。
今回も債権者のなかで、エポスカードが訴訟提起をしてきました。
裁判で判決が出ると差押リスクがあるため、それを避けるには、法的な主張をしたり、個人再生を申立てる予定であることを伝え、期日を続行してもらう必要があります。
今回も経緯説明をして、判決前に個人再生の申立をおこない、裁判は取下げられています。
個人再生での再生計画案による減額
約3000万円の借金がありました。
最低返済額10分の1相当である300万円に減額する再生計画案が認可されています。
毎月の支払は、5年弁済を利用し、5万円程度となっています。
2700万円の減額を受けられた結果となりました。
伊勢原市にお住まいでしたので、横浜地方裁判所小田原支部での手続きとなりました。
法人代表者の個人再生の依頼も多くありますので、借金でお困りの方はぜひご相談ください。