ケース紹介
バイナリーと個人再生ケース紹介
ケース紹介113 Sさんの事例
厚木市在住 ( 自営業 / 30代 / 男性 )
借入の理由:バイナリーオプション 債務総額420万円
神奈川県厚木市に在住の30代男性からの相談でした。
借金の原因はほぼバイナリーオプションでの失敗。親名義でも取引をしていたとのことで、ワイジェイカード、楽天カード、ジェーシービーなどクレジットカードを中心に420万の借金がありました。
借金の減額幅
債務約420万が約100万円まで減額されました。
月額支払は約3万円となっています。
バイナリーオプションの個人再生
借金の理由は、バイナリーオプションでの失敗とのことでした。
以前から、クレディセゾンやワイジェイカードなどのクレジットカードを日常の決済に利用していました。
当時の収入も手取り25万円程度で、実家に生活費を入れていたものの、賃貸物件を借りるよりも住居費を抑えられていたので、返済は問題なくできていました。
しかし、約3年前から、バイナリーオプションをはじめました。
自動売買のツールを購入して運用するようになりました。始めた動機は、お金を稼ごうと思ったものでした。
自分の口座を作って取引を始めたところ、資金の入出金の問題ということで、口座が凍結されて、使えなくなってしまったとのことでした。
母親名義でのバイナリーオプション
他の業者を利用して取引をすれば良さそうなものですが、その業者での取引を継続したいと考え、母親に名義を貸してほしいと伝えて、母親名義の口座を開設し、取引をするようになったとのことでした。
バイナリーオプションによって利益を得ることもありましたが、最終的には大きな損失になってしまいました。
取引資金が不足したので、消費者金融からの借入をして支払をしました。これにより利益が出る時期もありました。
借金でバイナリーオプション
当初は自分名義のクレジットカード等で借金をし、相談者名義の預金口座から母親の預金口座に送金し、そこからバイナリーオプション口座に入金して取引をおこなっていました。
バイナリーオプション口座の入金が、預金からの送金やカード払いの場合には、名義人本人の口座やカードでなければならないということで、母親名義の口座を経由して、バイナリーオプションの口座に送金したものでした。
このような取引でも、大きくマイナスを出してしまい、母親のクレジットカードを利用させてもらって取引を続けました。母に負けた分を取り返したいと言ったら、返済できるなら一時的に使っても良いと貸してくれたとのこと。
しかし、結局、返済できるような利益は出せませんでした。
債務整理依頼後にもバイナリーオプション
結局、相談者の借金の返済ができなくなり、債務整理の依頼。
その後、法律事務所から打ち合わせをしたい旨の連絡を受けたのですが、自営業の売上が上がったり、以前の仕事の退職金が入ったこともあり、バイナリーオプションで勝てば一気に返済ができると安易に考えてしまい、再度、手を出してしまいました。
母親にはバレたくなかったので、母親名義の預金口座やクレジットカードを利用しない入金方法はないか調べ、キャッシュという決済方法を利用して、それまでの口座にお金を入れ、再度取引をしました。
この取引で、一時期、利益を得ることはあったのですが、借金を完済できる金額まで増やそうと考えてしまい、すべて失ってしまいました。
バイナリーオプションの怖さを実感し、母親にも迷惑をかけてしまったので、今後は手を出さずに収入の範囲内で生活をしたいと考えているとのことでした。
一時的に利益を出しても、手を引くタイミングを間違えて、損失になるのは、FXなどの投機行為ではよくある話です。
銀行取引内容の説明
個人再生でも自己破産でも、裁判所には預金取引明細を提出、不明な取引は補足説明をする必要があります。
今回もバイナリー関係で指摘を受けそうな取引が多数あったため、報告書を提出し、補足説明をしています。
キャッシュ・KYASHとあるものは、アプリの資金管理サービスのKyashを利用したもの。
銀行間の送金や決済サービスとして利用していました。
親の口座への出金も多数ありました。これは、親名義でバイナリーオプションをしていたところ、親名義の預金口座からでなければ入金ができなかったため、親名義の口座を経由して、バイナリーオプションの口座に入金したものとの説明をしています。
バイナリーオプション口座の明細
FXやバイナリーオプションをしている場合には、取引口座の明細も提出を検討します。
どのような取引だったのかによって、自己破産であれば免責許可の判断、個人再生でも履行可能性の判断に影響する可能性があるからです。
また、今回のように親族の口座を利用しているような場合には、お金の推移も問題になります。
バイナリーオプション口座の入出金を見ると、1000万円以上の損失を出してしまっていました。
自身の収入や借金からの入金のほか、母親のカードからの入金もあり、母親にも数百万円の損失を与えてしまっていました。
自己破産の場合の見通し
バイナリーオプションという投機行為と家族名義での取引があることから、自己破産の申立をすれば、管財事件になる可能性が極めて高い事件でした。
また、母親名義の預金口座の調査、破産管財人によっては母親からの聞き取りがされる可能性もありました。
自営業の関係で、自身の預金口座には、70万円前後の残高がありました。
自己破産の破産管財事件では、資産99万円までの自由財産拡張が認められやすい傾向にあります。しかし、この金額は破産管財人や裁判所によってバラツキがあります。免責不許可事由の程度がひどい場合には、残せる金額が下がるリスクもあります。過去には、99万円までの財産を残すことが認められず、破産管財人によって財団に組み入れるよう指示があった事例もあります。
自己破産と個人再生の違い
そのような懸念点もあったことから、一時は自己破産を検討していたものの、個人再生を希望するようになったため、個人再生の申立を進めることとしました。
バイナリーオプションは投機行為のため、自己破産では免責不許可事由になります。債務額からして他の事例と比較すれば、裁量免責は許可される可能性が高いですが、破産管財人が選任される管財事件になる可能性は極めて高いです。
自己破産での負担としては、管財予納金20万円、破産管財人との面談、債権者集会への出頭など金額的・時間的負担があります。また、上記のように自由財産拡張が認められるかどうかもリスクがあります。
個人再生の場合、減額された金額を債権者に支払うことにはなります。ただ、個人再生では財産は処分されません。預金残高は清算価値に計上されますが、もともとトータル資産が100万円を下回っていれば、最低返済額は100万円。金銭的負担は変わりません。
2023年の運用では、神奈川県ではそこまで個人再生委員が選任される案件は多くないため、個人再生委員の費用負担や面談の時間コストは少ないです。
このような点を考慮して、個人再生を選択しました。
個人再生での繰り上げ返済
個人再生では再生計画案が認可・確定されれば、それを3年程度で分割で支払っていくことになります。
その際、繰り上げ返済は法的には禁止されていません。少なくとも、全社を一括で繰り上げ返済するのであれば、問題は起きません。
本件でも、預貯金残高があったことから、一定期間の分割払いをした後、繰り上げ返済を行い、再生計画案の返済を終了させています。
おそらく相談者にとってのトータルの負担としては、自己破産よりも少なかったのでしょう。
これにより、債務約420万が約100万円に減額できています。
バイナリーオプションを原因とした個人再生の依頼も多くありますので、借金でお困りの方はぜひご相談ください。