ケース紹介
会社代表の個人再生ケース紹介
ケース紹介129 Tさんの事例
横須賀市在住 ( 会社代表 / 40代 / 男性 )
借入の理由:生活費 債務総額600万円
横須賀市にお住まいの40代男性からの相談でした。600万円の債務が払えないとのことで個人再生を希望するとのことでした。
聞いてみると、法人の代表者になっているとのことでした。
そこで、法人代表者の個人再生の注意点も合わせて解説します。
個人再生とは?
個人再生は債務者が経済的に再スタートを切るための法的手続きです。借金を減額して、3年程度で分割払いをしていく制度です。
会社の代表者が個人再生を行う場面で特有の問題点がいくつか存在します。
財産の区別の問題
個人再生では、自己破産と同じように申立人の財産がいくらかが問題になります。財産が処分されるものではありませんが、財産以上の支払いはしないといけないルールになっています。
財産が多額にあるなら、返済額も高くなります。
会社代表者の場合の問題として、会社と代表者の財産が明確に区別されていない場合が多いです。
例えば、代表者が会社の株式を保有している場面では、その株式の価値の評価が必要になります。会社名義の預貯金も実質的に代表者が自由に使ってしまっていることもあります。このような場合、株式の評価をどう考えるかという問題になっていきます。
個人再生と非公開株式の評価
通常、代表者が保有する株式は非公開です。証券会社などで売買できる上場している株式であれば、評価額が市場で決まっていますが、非公開の場合には、価値がわかりにくいです。
そのため、清算価値との関連で株式の評価が重要になります。一般的に、1株当たりの純資産額が評価の目安とされます。
直近の貸借対照表などから算出することになるでしょう。そのうえで、預貯金の動きが通常と違うなら、修正をすることになるでしょう。
法人代表者の個人再生での必要書類
個人再生で必要な書類のほかに、代表者であることから独自に必要だと言われる書類が出てきます。
- 商業登記履歴事項全部証明書
- 法人決算報告書(2期分)の写し
- 会社の事業に関する報告書
- 会社の債権者一覧表
- 会社の財産目録
- 会社の事業収支実績表
などがありえます。法人の役員報酬から個人再生の支払いをするのであれば、法人の会計状態も問題になるので、個人事業と同じように資金繰りなども問われることになる可能性が高いです。
個人再生委員の選任
個人再生で、費用が加算される個人再生委員を選任するかどうかは各地の裁判所の運用で変わっています。
神奈川県内の場合、要調査事案では選任される傾向が高まっています。特に、横浜地裁での選任確率が上がっている状態です。
会社代表だと、上記のとおり、法人の会計処理から履行可能性を判断したり、株式の評価が必要になるため、他の事件よりも個人再生委員に調査してもらおうと裁判所が考える確率が上がるでしょう。
代表者個人再生の注意点
個人再生の要件との間で、代表者固有の注意点があります。
個人再生は、再生債権が5,000万円を超えない場合に利用できます。ここには保証債務も含みます。
代表者が会社の銀行融資、リース等の連帯保証人であり、その債務が高額であれば、この制限にひっかかる可能性があります。
また、代表者の保証債務を個人再生で減額することにより、会社の債務が一括請求されないか、事業や資金繰りへの影響も検討する必要があります。
代表者が継続的な収入を有するかどうかも大きな問題です。会社が破綻した場合、代表者もその会社からの収入を失います。
さらに、小規模個人再生では、債権者の同意が必要です。同意を得られない場合、手続きは進みません。特に、公的機関や一般の取引先等の債権者は、不同意とする可能性が高いです。このような債権者の保証人になっている場合で、過半数を握られている場合には、反対リスクをどう考えるか検討する必要があります。
今回は、形式上、会社の代表者となっている人の個人再生事例を紹介します。
法人の代表者になった経緯
当初は個人的なカード利用でした。返済に問題はありませんでした。
その後、仕事のストレスからか、ネットショッピングでの買い物も増え、支払いのため借り入れは膨らんでいきました。
楽天銀行のおまとめローンを利用しようとするなどしていました。
体調を崩して退職した際、知り合いから会社を継がないかとの誘いを受けたので、これに応じ、体調不良のなか法人代表者になってしまいます。
経営会社の説明
この会社は、知り合いが経営していた会社でした。退職するタイミングで声をかけられ、会社を引き継ぐことになり代表取締役となりました。
なお、会社の借り入れがありましたが、いずれも前社長やその親族からのもので、相談者は保証人になっていませんでした。
会社の業務を説明したうえ、従業員などはおらず、相談者1人ですべての業務を行っている点を報告しています。
役員報酬の説明
このような会社ですので、相談者の役員報酬は、振り込みなどは利用せず、相談者が会社の口座から引き出していました。
現金支給という形であり、給与明細のようなものは作成していませんでした。源泉徴収票についても、まだ作成していないとのことでした。
株式の評価
このような会社を引き受けたため、所有している株式の評価が問題となります。
引継時に取得した会社の株式については、発行済株式の20パーセント程度でした。
法人の最新の決算では、資産の部よりも負債の部の金額が大幅に高く、債務超過となっていました。
過去2年とも赤字決算という内容でした。
そのため、会社を清算しても残余財産の配分を受ける見込みはなく、利益配当を受ける見込みもないことを伝え、株式に価値はないという意見を提出しています。
なお、決算を依頼している税理士に聞いたところ、0円ではないかとの話もされたので、これも報告書にまとめています。
他のアルバイト収入での補填
法人の経営は微妙であり、実際の生活費もアルバイトで稼いでいるという事情もありました。
会社の役員報酬はあるものの、経営に余裕がないことも否定できません。しかし、アルバイト収入も合わせれば返済は見込める家計状況でした。
このような事情を説明し、履行可能性はあるとの意見書を出しています。
住居移転と決定時住所
生活費削減のため、近いところで転居していた事情がありました。
裁判所から、直近での転居のため、再生手続開始決定などの裁判所の決定書に前住所を併記するとの連絡があり、意見を求められたうえで、前住所も併記される扱いとなっています。
再生計画案による減額
借金は600万でした。清算価値は0と評価してもらいましたので、5分の1である120万円まで減額する再生計画案を出しています。
この金額でも家計がギリギリだったため、特別の事情を主張し5年弁済を認めてもらい、月2万円程度の返済となっています。
楽天カード、ポケットカードが各200万円以上の債権を持っていましたが、再生計画案には反対してきませんでした。
横須賀市にお住まいの方や会社代表者の個人再生の依頼も多くありますので、借金でお困りの方はぜひご相談ください。